第1回南会津サイクルトレイン開催時の企画趣旨

(当文章は第1回サイクルトレインを開催するに当たって企画した当時の2002年8月6日に掲載した文章をそのまま転載したものです。現在始発駅は業平橋駅(現・とうきょうスカイツリー駅)から浅草駅に(第2回から)変更して開催しております)

 鉄道に自転車を持ち込み、行楽地までアクセスしようという臨時列車を企画しております。

欧米ではすでに一般的な方法ですが、日本では一部のローカル線を除き、先例はありません。

地球単位で見る環境への影響も深刻な今、自動車中心の行楽地へのアクセスを見直し、また渋滞の緩和にも一石を投じるという意味でも、多くの注目を集めることと考えています。
 今回、東武鉄道、野岩鉄道、会津鉄道の協力を得て東武鉄道・浅草駅の隣り、業平橋駅から会津鉄道・会津田島駅まで約190Kmを結んだサイクルトレインを実現いたしました。

1.バックグラウンド

 21世紀の交通のありかたとして、自転車に対して注目が集まっています。
国土交通省は東京都などと協力して、都心一帯に総延長34キロの自転車道路網を整備する方針を決めたと発表しました(1999年12月9日)。内環状(内堀通り)、外環状(外堀通り他)、放射線状道路(皇居を中心に周辺地域に延びる国道20号や246号など)10本程度の街道などが対象です。約33億円をかけ、2006年度には完成させる方針です。都市の自動車による交通を、自転車に移行させることにより、交通渋滞の緩和、二酸化炭素削減を含む大気汚染対策が狙いです。

 

 これは都市だけでなく、レジャーについても当てはめることができます。行楽地へのアクセスはマイカー利用が増えつづけていますが、常に渋滞が付いてまわり、リフレッシュのはずがかえってストレスになる傾向もあります。地球単位で考えた場合の環境への影響も深刻です。
そこでレジャーの一形態として、自転車を列車に持ち込み、行楽地へアクセスする方法について考えてみました。

2.サイクルトレインとは

 サイクルトレインとは自転車を分解、パッキングすることなく、そのまま載せられる列車の通称で、現在日本国内で10箇所あまりで行われています。その多くはローカル線、あるいは行楽地でのイベント的に行われているケースです。都市から行楽地へと直結するケースは、未だ先例はありません。
今回実施する南会津地方では、ここを拠点に営業する会津鉄道が利用者の希望に応じてサイクルトレインを仕立てることができるよう、既存のダイヤに増結という形で対応してきております。

 サイクリングを楽しんだ後に、列車に自転車を載せてそのまま帰るという手軽さは、非常に魅力的なものです。しかし残念ながら、今は会津鉄道の区間のみで、それと首都圏をつなぐ路線では、既存のルールに従い、輪行(車輪を外し、専用バッグに収納して持ち込む)という方法が必要です。
輪行は専用のスポーツ自転車が必要であることと、一般のサイクリング愛好者にとって前後の車輪を外すということは非常に敷居が高いようです。そのために自転車を運ぶ人たちは、自動車に専用キャリヤを装着し、それに積むというケースが多いのです。
 そのようなことから、首都圏からそのまま行楽地へと、自転車をそのまま載せることのできるサイクルトレインの可能性について探ってまいりました。その対象は、スポーツとしてのサイクリング愛好者のみならず、買い物用自転車も含めて考えています。
 欧米諸国では通常の列車にも自転車を持ち込むということは一般的ですが、先例のない日本では、一挙に通常の列車に自転車をそのまま持ち込むことの許可は難しく、まずは、臨時列車を仕立てることで始めることとなりました。

3.日本で唯一の可能性

 東京から周辺の行楽地へとアクセスする路線は、東西南北の方向に多くあります。
しかし臨時列車としてのサイクルトレインを考えた場合、以下の考慮が必要です。
 1)単に首都圏での乗降が可能であるだけでなく、サイクリングを楽しむフィールドまで

     接続出来ることが必要。
 2)サイクルトレインは乗り降りに時間がかかるので、基本的に停車時間が長くとれることが必要。
 3)自転車をそのまま持ち込むため、一般の乗客の方へ迷惑がかからない配慮が必要。
 
 都心の浅草駅を起点とする東武鉄道は、東武日光線が会津鉄道にも乗り入れ、その路線距離は210kmにも及びます。会津鉄道沿線には豊かな自然が広がっており、都会のオアシスとして絶好のフィールドを提供します(1)。また浅草駅の隣り、業平橋駅は臨時ホームを持ち、一般乗降客とは別の入口からの乗降が可能など(2),(3)の条件を満たしております。このようにサイクルトレインとしてこの路線に着目する意味は大きいと考えています。

4. 対象エリア

 業平橋駅を起点に考えた場合、自転車で走って集合できる範囲はどの程度でしょうか?
業平橋を中心に半径10kmの円を描いてみると東は浦安、市川、金町、北は足立区の竹の塚、赤羽、板橋、池袋、新宿、渋谷まであと1km、品川であと1kmとなり、この範囲には台東区、墨田区を中心に足立区、荒川区、新宿区、文京区、千代田区、中央区、江東区、江戸川区、葛飾区などがほぼ入ります。
 この範囲が自転車で走って1時間です。6時半に家を出発すれば、7時半には浅草に着けます。集合時間を8時とすれば、8時半過ぎの列車出発には間に合うという計算になります。
荷物などはあらかじめ現地に送っておくような手はずを整えておけば、参加者はアクセスしやすいでしょう。首都圏中心部に住む人たちは、これである程度は網羅できるのではないかと考えます。
 もちろん、これらの範囲の方々だけでなく、多くの方にサイクルトレインの快適さ、便利さを楽しんでいただきたいと考えております。遠くの方々はやはり輪行やレンタル等の利用となりますが。

5. 買い物用自転車での参加も

 また、スポーツとしてサイクリングを楽しんでいる層以上に、買い物用自転車に乗っている人たちに、サイクリングの魅力とサイクルトレインの意義を訴えたいと考えています。 そのために買い物用自転車でも気軽に楽しめる体験学習と組み合わせた「のんびりコース」も用意しました。
 浅草駅のある台東区は今回のフィールドとなる会津田島町と、姉妹都市関係を結んでいます。出発地・業平橋駅のある墨田区は舘岩村と友好関係にあります。このつながりを利用して台東区/墨田区を中心に、強くアピールしたいと考えています。

 まだまだ詰める点は多々ありますが、日本で始めての首都圏からそのまま行楽地へ結ぶサイクルトレインを我々の手でぜひ実現させたいと考えております。ぜひとも皆様のご理解、ご協力をいただけるようお願いいたします。